中村卓也 警官殺傷事件 画像

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警官殺傷事件の中村卓也容疑者、奇行で事件前日に聴取
 千葉県佐倉市で成田空港の検問を突破して逃げた男に警察官2人が殺傷された事件で、殺人などの疑いで逮捕された同県八千代市大和田新田、無職中村卓也容疑者(34)が、事件前日、八千代署員に事情聴取されていたことが9日、わかった。

 今年9月以降、自宅で屋根瓦を投げ落とすなどの行動を繰り返していたためで、佐倉署は、中村容疑者が「警察に捕まるのでは」と思い込んでいたことが、事件につながった疑いがあるとみて調べている。中村容疑者が乗っていた乗用車の中に、凶器のナイフとは別の刃物2本があったこともわかり、同署は銃刀法違反容疑でも追及する。

 県警や近隣住民によると、中村容疑者は今年8月ごろまではほとんど外出しなかった。しかし、9月26日、「泥棒に入られた」と八千代署に通報。実際には被害がなく、言動が不審だったことから、同署は保健所に連絡した。

 保健所職員が何度か中村容疑者宅を訪問したが、屋根瓦を投げ落とすなどの行動が続いたため、再び同署に通報。事件前日の7日、同署員が自宅を訪れて事情を聞いたところ、中村容疑者は「瓦が重いから」などと答え、任意同行を拒んで自宅に閉じこもったという。

県警、職質時に刃物確認 警官殺傷事件

 成田空港の検問を突破した男が、佐倉市内の路上で2警官を殺傷したとされる事件の詳しい状況が9日、県警の調べでわかった。免許不携帯の発覚が2人が死傷する事件につながった形だが、捜査の過程で、逮捕された中村卓也容疑者(34)の不可解な行動ぶりも浮き彫りになっている。
 これまでの調べでは、中村容疑者は8日午後2時半ごろ、成田空港に通じる第2検問所で職務質問を受けた。15分ほど応じていたが、「車検証を取りに行く」と言って車に戻った途端に逃走を始めた。車止めを7、8メートル引きずり、検問所のバーを突破した。
 県警は職務質問の際に、中村容疑者が刃物を持っているのを確認していたといい、無線で追跡する車などに伝えていたとされる。
 中村容疑者の車は東関東自動車道に入り、追跡する石塚忠志警視(48)=殉職後に警部補から2階級特進=らのパトカーが追いかけるなか、同2時59分に佐倉インターのETCレーンを突破。約1・5キロ離れた周囲に田畑が広がる市道で車を降りた。

 石塚警視が、中村容疑者に近づいたところ、まもなく刃渡り約8センチのナイフで脇腹を刺された。石塚警視は、逃げる中村容疑者を追いかけたが、約160メートル先で倒れたという。その後まもなく、佐倉署のパトカーがかけつけ、中村容疑者は現行犯逮捕された。この際、さらに巡査部長(40)もナイフで切りつけられ、軽傷を負った。
 司法解剖の結果、石塚警視の死因は右腋下動脈損傷による出血性ショック死。傷は1カ所で深さは7、8センチあったという。
 石塚警視は防刃着を身につけていた。県警は「今回の事件をよく精査し、再発防止の対策を立てたい」としている。

 中村容疑者は、八千代市内で一人暮らしをしていた。当日の行動について「飛行機の写真を撮るために空港に行った」と供述しており、車内からも3台のカメラや航空機に関する本が発見された。
 その一方で、最近では自宅2階から屋根瓦を投げたり、庭で積み上げたごみに火をつけたりし、近隣住民が八千代署に相談に行っていた。
 八千代署や習志野健康福祉センターによると、同署が中村容疑者の不可解な行動を把握したのは9月26日。同センターに通報し、センターは10月21日から11月7日にかけて5回、訪問したが、いずれも本人と接触できなかったという。
 同センターは「措置が必要と認められれば強制的に入院させるが、状況調査の段階だった。こんな結果になってしまい残念だ」としている。
刺された後も追跡か 死亡の警官
 千葉県佐倉市で警察官二人が殺傷された事件で、死亡した成田国際空港署の石塚忠志警部補(48)=八日付で警視に昇任=が、殺人未遂などの現行犯で逮捕された無職中村卓也容疑者(34)=同県八千代市=に刺された後、同容疑者を約百六十メートルにわたって追跡したとみられることが九日、佐倉署などの調べで分かった。

 調べによると、現場となった同市下勝田の市道に、中村容疑者が乗り捨てた車の近くから石塚警部補が倒れていた地点まで約百六十メートルにわたり血痕が点々と残っていた。

 石塚警部補が車から降りた中村容疑者に近づいて職務質問しようとし、ナイフで刺されて負傷したが、同署はその後も追跡を続け、力尽きたとみている。

 石塚警部補は防刃ベストのすき間から右脇の下部をナイフ(刃渡り八センチ)で刺されており、死因は動脈損傷による出血性ショック死。傷は一カ所のみで、深さは七−八センチに及ぶ。刺されてから約六時間半後に病院で死亡した。

 同署は、中村容疑者が使用していた車からカメラ三台とフィルム七本、飛行機に関する雑誌一冊を押収。同容疑者は「成田空港へは飛行機の写真を撮るために行った」と供述しており、逃走理由や殺害の動機などの調べを進めている。
検問突破男に刺された警官死亡

中村容疑者が事件直前に突破した成田空港の第2ゲート

 千葉県佐倉市の路上で8日午後3時5分ごろ、同県警の警察官2人が、成田空港の検問を突破した男を追跡中、男にナイフで刺された。1人は約7時間後に出血性ショックのため死亡。佐倉署は殺人未遂などの現行犯で自称、同県八千代市の無職中村卓也容疑者(34)を逮捕。殺人容疑に切り替えて調べている。中村容疑者は「免許証を持っておらず、捕まるのが怖くて刺した」などと供述している。

 中村容疑者は、空港へは「飛行機の写真を撮りに行った」と供述。免許証は自宅に忘れたという。免許証不携帯は減点なしの反則金3000円にもかかわらず、検問を突破した上に「殺すつもりで刺した」と話していることから、佐倉署では詳しい動機を追及している。死亡したのは成田国際空港署の石塚忠志警部補(48)。佐倉署の林敏弘巡査部長(40)は左腕に軽傷を負った。

 中村容疑者は午後2時50分ごろ、成田空港第2ゲートで警察官に職務質問を受け、免許証を持っていないことが分かった。警察官が応援を呼ぶと、乗ってきたワゴン車で空港敷地内に侵入。石塚警部補らがパトカーで追跡した。さらに空港出口の検問を突破して東関道自動車道に入り、約15キロ離れた佐倉インターで降りた。パトカーにバックで衝突するなどした後、佐倉市下勝田の路上で車を降りて逃げようとした。

 石塚警部補と同僚の巡査長(52)が中村容疑者の両側に立ち職務質問していた際、いきなり刃渡り6センチのナイフで石塚警部補の右脇腹を刺して逃走。約250メートル先で捕まえようとした林巡査部長に切りつけた後、佐倉署員ら7、8人に取り押さえられた。石塚警部補はジュラルミン製防刃ベストを着ていたが、脇腹は無防備。中村容疑者は空港ゲートで職務質問された際、ズボンのポケットにナイフを所持しており「護身用」と説明していた。

 八千代市の中村容疑者宅は8日、電気も消え、静まり返っていた。近所の住民によると、中村容疑者は2カ月ほど前から付近に姿を現すようになった。2階から瓦を投げ落とし、自治会が警察に相談したり、両親が「息子が家に入れてくれない」などと話すこともあった。奇行に耐えられなくなった両親は、中村容疑者の双子の妹宅に避難していた。