石原慎太郎東京都知事 賭け発言に波紋 ベルグソン キャプチャー画像


石原都知事の乾杯あいさつに波紋
 石原慎太郎東京都知事(73)が、15日に東京・内幸町の帝国ホテルで行われた、天皇家の長女黒田清子さん(36)と東京都職員黒田慶樹さん(40)の披露宴で述べた乾杯のあいさつが波紋を広げている。石原都知事はフランスの哲学者ベルグソンの言葉として「信仰と結婚は似ている。本質は賭け」と紹介したが、研究者の間では「聞いたことがない」との声が広がっている。

 天皇、皇后両陛下や皇太子ご夫妻らが出席した披露宴で、石原都知事が行った乾杯のあいさつに、ベルグソンの研究者から疑問の声が相次いでいる。

 「ベルクソンとカントの社会論」(近代文芸社)の著者、筒井文隆東京学芸大名誉教授(西洋近現代哲学=65)は「私の記憶の限りではそのような言葉はありません。ベルグソンに人間同士の問題である結婚と、信仰とを同列に見るという考えはなかったと思います。『信仰とは賭けである』とはパスカルの言葉だと思うのですが…」。ベルグソンの著作「物質と記憶」の訳者・田島節夫(さだお)氏(80)も「そのようなベルグソンの言葉は聞いたことがない」と話している。

 フランス哲学の研究者によると、ベルグソンの著作「道徳と宗教の二源泉」(1932)は婚姻制度に触れているが「賭け」という言葉は出てこないという。この研究者は「引用した言葉が、ベルグソンの言葉ではないと証明することはできないが、かなり疑わしい。ほかの人の言葉と混在している可能性がある」と、疑問を呈した。

 「小林秀雄ベルクソン」(彩流社)の著者、文芸評論家の山崎行太郎氏(58)は「聞いたことがない。出典を明かしてほしい」と前置きして「仮にその言葉があったとしても、石原都知事は言葉足らずだった。あの言い方では、宗教や哲学で『それ以外の選択肢がない』という重い意味の賭けという言葉が、当たり外れがある賭けというように聞こえる。違和感を感じた人は多いと思う。一般的にはマニアックなベルグソンを出したのはいいが、ひねりすぎたかもしれない」と指摘した。

 「フランス文化に愛着もあるし、尊敬している」と話す石原都知事のことだけに専門家が知らないところから引用した可能性はある。東京都の知事本局では「今のところ(都民らから)そのような指摘は受けていない」としている。
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