広島女児殺害事件 ホセ・マヌエル・トーレス・ヤケ キャプチャー画像


偽名確認、本名は「トーレス・ヤケ」 広島女児殺害事件 2005年12月09日02時32分

 広島市安芸区の小1女児殺害事件で、県警捜査本部は8日、殺人と死体遺棄の疑いで逮捕したペルー国籍の自称フアン・カルロス・ピサロ・ヤギ容疑者(30)について、本名が「ホセ・マヌエル・トーレス・ヤケ」で年齢も33歳であることを確認した、と発表した。

 捜査本部によると、外務省から国際刑事警察機構(ICPO)を通じてペルー政府に照会した結果、今回の捜査で採取した同容疑者の指紋と、ペルー側が国民登録手続きで保有する指紋が一致したという。「トーレス・ヤケ」の名前は、92年の女児暴行事件でペルー当局から指名手配されている。

 捜査本部は今後、「ピサロ・ヤギ」名義の不正なパスポートで来日したとされる出入国管理法違反(不法入国)容疑の立件に向けて、裏付け捜査を進める。

女児殺害、トレス・ヤケ容疑者の軌跡…ペルーから

トレス・ヤケ容疑者が少年時代を過ごしたペルー北部グアダルーペの実家近くの通り(中島慎一郎撮影) 【リマ=中島慎一郎】広島市の小1女児殺害事件で逮捕されたホセマヌエル・トレス・ヤケ容疑者(33)。故郷で幼児への暴行を繰り返し、「怪物」と恐れられていた。一方では幼少期に両親から暴行を受け、その裏返しなのか、弱い者いじめをしていたとの証言もある。そして広島で……。その軌跡を追った。

 ■モンストロ
 「彼は以前から子どもたちに『モンストロ(怪物)』と呼ばれていたのよ」

 トレス・ヤケ容疑者が生まれ育ったペルー北部のグアダルーペ。13年前、9歳の娘が容疑者に暴行された母エステラ・メンドーサさん(43)は語った。

 「モンストロ」は、ペルーでは57年に死刑にされた男児暴行殺害の犯人のあだ名としても知られ、非人間的な暴行犯の代名詞だ。

 容疑者は女児や男児に対する暴行を重ねてきたが、人口約3万5000人の小さな町では、周囲に知られることを恐れて大人たちは告発をためらい、表面化することはなかった。

 92年12月12日。容疑者は「ボールをあげる」とメンドーサさんの娘を部屋に誘い込むと、声が漏れないよう音楽を大音量で流して暴行した。娘の腕と足に刃物の切り傷があり、腕には深い歯形が残っていた。

 メンドーサさんが「もう終わりにしたい」と告発、容疑者は逮捕された。地元住民らは厳刑を求める署名を裁判所に提出した。だが、未遂事件とされ、容疑者は翌年、保釈金を払って仮釈放された。94年と95年にも少女暴行事件を起こした。

 メンドーサさんは「娘も私もいまだに傷は癒えていない。死刑よりも重い罰を与えてほしい」と訴える。

 ■幼少期
 実家近くの住民によると、トレス・ヤケ容疑者は7歳のころから、ささいなことでカッとなり、通りで遊ぶ子どもたちに暴力を振るうようになった。当時、一緒に遊んだことがあるという男性(27)は「年下の子どもとばかり遊んでいた。いつも自分中心でないと気が済まなかった」と打ち明ける。

 一方、容疑者自身も両親から暴行を受けていたとの証言もある。両親による暴力が目に余るようになったため、近所の女性(51)が忠告すると、母親は「いくら殴っても言うことを聞かず、手に負えない。何かあったらぜひ殴ってください」と答えた。この女性は、カウンセリングを勧めたが、両親は怒って断った。

 「あの時きちんと対応していたら、こんな結果にならなかったかも……」。女性はため息をついた。

 ■広 島
 容疑者は「フアンカルロス・ピサロ・ヤギ」の偽名パスポートを手にし、昨年4月に来日。今年6月に広島に移り住んだ。ここでも女児に異常な関心を示していた。

 近くの中学のグラウンドで、町工場で働く日系人らが週末、サッカーを楽しんでいた。容疑者は参加せず、ブラジル人の女子中学生から視線をはずさず、周囲を気味悪がらせた。

 事件1週間前、近所の主婦は容疑者の自宅アパート前を通りかかった。「外国人の男が5歳の娘をじっと見つめていた。変だと思った」。主婦は逮捕を報じる新聞の顔写真を見た。容疑者に間違いなく背筋が寒くなった。(この項、広島総局) (2005年12月10日 読売新聞)
広島の女児殺害容疑者、「ピサロ」は偽名・県警断定
 広島市安芸区で下校途中の小1女児(7)が殺害された事件で、広島県警は8日、殺人と死体遺棄容疑で逮捕したフアン・カルロス・ピサロ・ヤギ容疑者の本名は「ホセ・マヌエル・トレス・ヤケ」で1972年2月生まれの33歳と断定し、訂正して発表した。

 逮捕後に採取した容疑者の指紋を、外務省と国際刑事警察機構(ICPO)を通じペルー当局に送付。同日、指紋が一致する人物は「トレス・ヤケ」との回答を得た。

 トレス容疑者は当初の調べや接見した弁護士に「ピサロ・ヤギ」を名乗り、30歳と説明していた。

 県警によると、ペルーでは18歳以上の国民に住民登録を義務付け、指紋を採取しているという。トレス容疑者はペルーで幼女への暴行を繰り返し、出頭命令が出ていたとされるが、県警は犯歴の回答は得ておらず、日系人かどうかも不明としている。

 トレス容疑者は「ヤケではなくヤギ」と説明。家族らによると、祖父は沖縄からの移民で「ヤギ」姓だったが、地元の人が呼びやすいように、現地で一般的な姓の「ヤケ」に変更した可能性があるという。〔共同〕 (20:48)