松下温風機事故 キャプチャー画像

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【2005年12月15日】
松下温風機事故、問い合わせ1日2200件強

 松下電器産業は14日、一酸化炭素中毒事故を招いた同社製石油温風機の対象機種に関する問い合わせ件数が1日で2200件強に達し、回収を始めてから約10日間で3倍以上に増えていることを明らかにした。テレビCMでの告知に加え、コールセンターの回線や人員も増強し、部品を交換した製品の安全確認と所在が不明な9万4000台の回収を急ぐ。

 同社は5日に部品交換済みの機種で事故が起きたことを公表。6日には部品交換済みを含め、対象機種すべてを1台5万円で買い取るなどの緊急対策を発表した。

 対象機種についてコールセンターへの照会件数は5日時点の1日600件強から3倍強に増加。これに伴い、センターの電話設置台数も2倍近い550台に増やし、400人の人員を配置し対応にあたっている。

松下の温風機事故、原因はホース亀裂以外の可能性も
 松下電器産業製の石油温風機による一酸化炭素中毒事故が相次いでいる問題で、同社は、今年1月に福島県で事故が起きた直後、同タイプのFF(強制給排気)式温風機の燃焼実験を行い、「ゴム製ホースの亀裂だけでは死傷事故に至らない」という結果を得ていたことが12日、わかった。

 同社はすぐに事故を公表せず、顧客サービスキャンペーンとしてホースの無償交換で対応していた。

 松下電器によると、1月5日、同社のFF式温風機を使っていた福島県内のペンションで父子が死傷する事故が起き、不完全燃焼が原因と見られることから、社員の自宅などからFF式温風機を31台回収。1月9日から2月15日にかけ、ゴム製ホースに亀裂が見つかった9台について燃焼実験をした。吹き出し口から出る一酸化炭素の濃度を調べた結果、最大で13ppmの濃度を検知。同社は「1600ppmの濃度の室内に2時間いると死亡するデータはあるが、この濃度では死亡には至らない」(広報グループ)と判断したという。

 しかし、同社は原因が特定できないまま、2月10日、顧客キャンペーンとして同型機の無料点検を始め、ゴムホースから銅製ホースに交換。事故は公表しなかった。

 その後、長野県でも2月23日と4月13日に計4人が入院する同様の事故が発生し、同社は、ゴム製ホースの亀裂のほか、屋外に出た給排気筒が変形していたのを確認。給排気筒の変形によって送風機の回転数が低下するという複合的要因も重なり、不完全燃焼が起きたと推定したというが、同社がリコールに乗り出し、ホース交換とともに給排気筒の重点的な点検などを販売業者らに要請したのは、福島の事故から3か月以上たった4月20日だった。

 同社広報グループは「(公表やリコールなどの)緊急を要するという判断はしなかった。当時としては最大限の措置をとったと考える」としている。

松下が部品“ヤミ交換”・・・温風機中毒
公表前「無料点検」とPR
 松下電器産業製の石油温風機による一酸化炭素中毒事故が相次いでいる問題で、同社が事故を初めて公表する約2か月前から、顧客サービスキャンペーンとして、問題の部品の無償交換を始めていたことが10日、わかった。最初の死亡事故から約1か月後で、同社は、遅くともこの時点で原因の重大性を認識していたとみられる。キャンペーンでは無料点検をPRする一方、販売業者には原則、部品交換を指示していた。

 同社は2月10日、温風機を含む97種類の石油機器の製造を3月末で打ち切ると発表。「ご愛顧御礼キャンペーン」として、うち温風機29種類に限って無料点検を受け付けるとした。

 これより1か月以上前の1月5日、同社製のFF(強制給排気)式石油温風機を使っていた福島県のペンションで宿泊していた小学6年男児(12)が死亡、父親が重体となる事故が起きた。

 無料点検対象の29種類のうち、25種類は一連の事故を受け、経済産業省が先月29日、回収命令を出した製品だった。

 関係者によると、同社はキャンペーンにあたり、販売業者らに購入者名簿の提出を求めたほか、原則、バーナーに空気を送るゴムホースを銅製ホースに交換するよう文書で指示。事故については知らせなかった。

 同社が事故を公表したのは、長野県で同様の事故が2件(5人軽症)相次いだ後の4月20日。会見で、老朽化によるゴムホースの亀裂を原因の可能性として挙げ、銅製ホースに無償交換することを初めて発表した。

 同社は「キャンペーンは、あくまでお客様への感謝の意を示すためのもので、事故を受けた対応ではない。公表が遅かったとの指摘には、反省する面もあるが、原因の調査に時間がかかった。事故を隠す意図はなかった」としている。

(2005年12月12日 読売新聞)
松下電器産業、温風機の事故公表2カ月前から部品交換
 松下電器産業製の石油温風機の相次ぐ一酸化炭素(CO)中毒事故を巡り、同社が4月下旬に事故を初めて公表する約2カ月前に、事故の原因と指摘されているゴムホースの交換を始めていたことが分かった。同社は「製品の生産完了に伴う顧客キャンペーンの一環で、事故を受けた対応ではない」と説明している。

 最初の事故は1月5日に福島県で発生した。

 同社は2月10日、問題の温風機を含む97種類の暖房器具の製造を3月末で打ち切ると発表。この一環で「ご愛顧御礼キャンペーン」として、温風機の無料点検を受け付けた。
企業の果たす責任、松下電器産業の場合は? その2
【PJニュース 12月12日】− 松下電器産業は石油温風機事故の問題で、今後の対応方法を「安全確保のための『緊急対策の実施』について」と題し、12月6日付で自社のHP上に掲載している。12月8日に「企業の果たす責任、松下電器産業の場合は?」なる記事を書いたが、最初の取材から10日が経過した今、近隣の主要市にある家電量販店、大型ホームセンター、ガソリンスタンド、大手スーパーなどを見て回った。

 先ずは、家電量販店へ。前回の記事でも書いたが、店頭の入り口や売り場で告知広告を掲示しているところは相変わらず無く、各店員に聞いてみても反応は鈍い。「松下電器から何らかの協力要請があったか?」という問いに対しても、「あった」と回答した店舗は皆無だった。次に、各大手ホームセンターの「灯油売り場」に行って見る。ここにも告知の掲示は無い。「有人」の売り場にも拘わらず、灯油を購入しに来たお客に対して、何も配布はされていなかった。ここでも、現時点で松下電器からの協力要請は無いと言う。また、「灯油用のポリタンク売り場」でも告知はされていなかった。

 今度は、有人の大手ガソリンスタンドへ車を走らせたが、やはりここでも告知の掲示や配布が成されている形跡は無い。このスタンドでは宅配灯油の業務も行っており、従業員にも尋ねてみたが「何も要請はされていない」と言う。ただ、「宅配に出向いた際には、企業独自で話を打ち出すようにさせている。特にお年寄りが暮らす家庭の場合には話す」と、ある店舗の責任者は語っていた。セルフタイプのガソリンスタンドへも寄って見たが、セルフサービスの為、灯油売り場に従業員は居らず、告知はされていない。購入して帰ろうとするお客が居たが、何も配布されることはなく、事務所に居た従業員に聞いても、答えは他店と同じだった。

 合計で10店舗ほどランダムに回り、電話でも5店舗ほど訊ねてみたが、結果これだけの人々が集まる箇所なのにも拘わらず、どこの業態でも告知はされていない。松下電器産業では、「安全確保のための『緊急対策の実施』について」の中で、「ガソリンスタンドや灯油販売店(推定60,000店)を対象としたローラー作戦の実施」と「お客様に対する告知の徹底」という内容を記載している。このことについて、8日木曜日に、松下電器産業・コーポレートコミュニケーション本部・広報グループへ問い合わせてみた。

 「このような状況の中で、告知方法が甘いのでは?」「このような集客力があるような箇所で、各企業の協力を得てなぜ告知しないのか?」との問いに対して返された答えは、「そうのような方法も有効な手段の1つとして、今後の告知に役立たせて頂きます」だった。松下電器産業は告知を徹底すると言いながら、徹底されているとは思えない。しかし、上記のような場所で告知を徹底したならば、当然松下電器の商品売り上げが減る可能性はある。ただでさえ、一連の損失額は、200億円を越えるとも言われている。年末年始商戦を目前にしたこの時に、これ以上の損失は出したくないという想いが見え隠れする気がした。

 人々が1番集まる週末にも数店舗回ってみたが、やはり結果は同じ。松下電器産業・広報グループに再度連絡し、まずは、「現時点での状況」を聞いた。広報によると、対象製造台数15万2132台のうち、フリーダイヤルなどの問い合わせにより、対象商品か否かの確認をした台数が「5万8000台余」で、そのうち対策を施した台数が「3万9000台余」になり、約1万9000台は対象外だった。一週間前に対策を施した台数が3万8000台余だったので、対策をとれた台数が1000台余増えたと言う。

 そして、「このような状況の中で、告知方法が甘いのでは?」「このような集客力があるような箇所で各企業の協力を得て告知しないのか?」という疑問を、再度投げかけてみた。答えとしては、「確かにそのような方法も有効な手段の一つであり、今後協議しながら手を広げていく」とのことだった。「一週間で1000台余の対策をとれた事は、多いのか少ないのか、早いのか遅いのか?」の問いには、「順調に進んでいる」という答えだ。また、告知の強化をしているのは対象品の特性から現在は、東北、北陸、上信越地区に重点を置き、社員千人規模の体制で行っている全国ローラー作戦も、今後は更に増やすと言う。

 テレビからは告知のCMが何度も流れている。企業の果たす責任の1つとして、「徹底的」に策を講じるべき責任は大きいはずだ。1件でも1人でも多く見つけるためにやるべき事とは何なのか。組織の中で、「判断」することは皆ができたとしても、「決断」することは一人にしか出来ないことだろう。果たして、判断と決断のバランスはとれているのだろうか